名器の極み
10日ほど前になるが、キタラで、ロシアの、世界的に有名な演奏家が集った、室内楽の演奏会があった。ヴァイオリニスト、チェリスト、ピアニストなど、夫々単独で演奏会を行っても、おそらく満員に違いないほどの顔ぶれである。その中に有名な日本人ヴァイオリニストの、諏訪内晶子が加わっていた。彼女はかつて、最年少でチャイコフスキーコンクールを制したんだが、なにしろ女優並みの美貌で、その頃くらいからだったと思うが、とかくクラシックの演奏家は演奏第一で、顔なんかはどうでもいい?みたいなことではなくて、天は二物も与えるのだ!という衝撃の先駆けだったんじゃないかな。これまでも何回か来札していたはずだが、残念ながらそれらの演奏会に行く機会には恵まれず、今回初めて40代半ばに達したその姿にお目にかかれたというわけ。ま、美人はいくつになっても美人だったけれども、そんなことは大したことではない。それよりも、彼女の弾くヴァイオリンの音の素晴らしいこと!!
ヴァイオリンの三大ブランドは、16、17世紀イタリアはクレモナで製作された、アマティ、ストラディヴァリ、グァルネリのものである、ということはご存知の方もおられようが、一番有名なのはストラディヴァリウスであろう。そのストラディの中でも三大ストラディヴァリウスと称されるものがあるんだそうだが、そのうちの2本は現在演奏会に登場することはなく、唯一ドルフィンと呼ばれる名器が、諏訪内晶子の楽器となっている。このドルフィン、かつては、いや、今も最高のヴァイオリニストと言われる、ハイフェッツが使っていたので有名なものなんだが、いや、その音の艶やかに響き渡ることといったら!久しぶりに、というか、何十年ぶりかで、痺れた。とにかく、格が違うとしか言いようがなかった。もちろん、演奏のウデもあるんだが、それにしても、である。楽器の音に感動するという経験は、滅多に味わえぬことのように思うが、本当に感動した次第。